台湾の魅力(1) 龍山寺の続きです。
九份老街は、高低差のある狭い路地にたくさんの屋台がひしめき合い、夜になると赤提灯が灯る。そんな幻想的な町並みで、千と千尋の神隠しのモデルとなった場所と言われています。観光地として非常に人気があります。
しかし私の興味はその更に山奥にある金瓜石鉱山にありました。
金瓜石鉱山は、非常に栄えていた金鉱の跡地だそうです。1985年に廃鉱となり、約35年もの歳月が経った今、そこはノスタルジックで幻想的な場所になっているに違いないと思ったのです。
と言う事で、台湾2日目は土砂降りの悪天候の中、金瓜石鉱山と九份老街を巡って来ました。
金瓜石鉱山へは、台北の北門駅から高速バスで向かいました。台北から北東方面へバスで1時間半ほど、距離にして40Kmくらいの山奥にあります。
観光地として整備された遊歩道や博物館の陰に、歳月の流れをそのまま感じさせてくれる景色がありました。私はそれらの景色に何よりも魅力を感じました。
北海道の廃墟は雪と風の力で朽ちて行きますが、亜熱帯気候の金瓜石では、逞しい植物の根と湿度によって朽ちて行くようです。
途中からずぶ濡れの1匹の黒い犬が後ろから着いて来ました。更に犬の遠吠えが四方八方から聞こえ始めました。野犬でしょうか。姿は見えないものの、鳴き声が徐々に近付いて来るのが分かりました。既に退路を断たれている私は前に進むしかありませんでした。
長い長い山道の階段を上がり続けました。ここまでは犬達も着いては来ませんでした。私は勝ったのです。
大雨の中で逃げるようにして辿り着いた場所は、まるで神殿のようでした。晴れていれば、きっと素晴らしい絶景に巡り合えた事でしょう。
犬達は恐らく別の食料を探しに行ったのでしょうか。激しい雨音の中にも静寂を感じます。
「靴はびしょ濡れだし、こんな怖い思いはもうたくさんだ!」
来た道を恐る恐る引き返した後、私は人を探し求めました。「誰か…誰か居ないのか。」「誰かぁ〜!」
ええ、大集団が居ましたとも。雨宿りをする人々の群れです。さっきまで感じていた孤独が嘘のように、人が鬱陶しく感じました。そう、綺麗に整備された観光地へと戻って来たのです。
ここからは王道観光コースを歩むことにして、本山五坑と言う鉱山に入ってみました。綺麗な入口に反して、哀愁ただよう人形達が働き続けていました。
鉱山を出た頃には台湾時間にして18時を回っていました。九份老街に向かう時間です。夜になって、赤提灯が灯るのを待っていたのです。
九份老街はとても素晴らしい場所でした。赤提灯の灯る狭い路地に、色々な食べ物やお土産が売っていました。そして店の人は皆親切でした。しかし、もの凄い大雨の中、あまりにも多くの観光客がいました。暗くなるにつれて人は増えて行く一方でした。
私は逃げました。人が居ない方へ、裏路地へと。そしてそこには、また廃墟がありました。繁栄と退廃の対比が、光と陰の対比がここにもあったのです。日が完全に沈めば、遠くに見える赤提灯の灯り以外は闇に包まれてしまうのでしょうか。
繰り返しになりますが、あまりに多くの人が居ました。そしてそれは帰るのを困難にしていました。バス停には長蛇の列です。しかも高速バスなので、座席に座り切れる人数しか乗れません。
どれほどの時間、この大雨の中のバス停に立っていなくてはいけないのでしょうか。私はトトロではありません。そんな忍耐力はありません。
そこで、たまたま来た、誰も乗ろうとしなかった適当な市バスに乗り込みました。どのバスだって山を下るのは一緒ですから、何でも良いと思ったのです。行き着いた先で、その時の事を考えれば良いと思いました。
その猫バス…ではなく市バスは、私を山の麓にある瑞芳と言う駅へ連れて行ってくれました。台北で見たMTRの駅とは全く雰囲気が異なります。
別のホームから乗った電車で帰りました。電車の中はクーラーがガンガンに効いていて、濡れた身体が急速に冷やされました。長く長く感じた電車の旅でした。
しかしこれもまた、思い出となった今になって振り返ると、大胆で刺激的な最高の思い出となったのです。
台北の中正駅に着きました。ホテルはもう、すぐ近くです。このようにして台湾2日目は幕を閉じました。
台湾3日目は、101など台北市内を観光して来ましたが、あまり写真がないので、次回は台湾旅行について軽くまとめる程度の記事にしたいと思います。
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