秘境駅の里(幌延町)

冒険

 日本最北端の稚内市から日本海側に南下して行くと、豊富町と天塩町があるということを、前回の記事で触れたが、豊富町と天塩町の間にもひとつの町がある。幌延町(ほろのべちょう)である。人口は2020年3月で2,245人とのこと。

 旭川駅から宗谷本線の特急稚内行きで、揺られること4時間弱の7駅目で幌延駅に到着する。

 間違って名寄駅乗換えの各駅停車に乗ろうものなら、旭川駅から7時間強の36駅目での到着となってしまう。控え目に言っても苦行である。何しろ特急の止まらない名寄駅以北は全て秘境駅と言っても過言ではないからだ。

旭川駅にて。左下の茶色い線が宗谷本線。
旅の始まりである。

 長旅になるが車内販売は一切ない。ここから先は、日本では当たり前に受けられると思っているサービスの多くが使えないか、不便を強いられることになる。例えばスマホの電波。クレジットカードや交通系ICカード(Kitaca)など。

 ましてやチェーン店のポイントカード(セーコーマートを除く)などもっての他である。

更に北、稚内へと向かう特急。

幌延駅

 幌延駅に到着した。スマホの電波は圏外が多かったが、流石に人の住んでいる場所では問題なく繋がる。走行中はネットになかなか繋がらないので、暇の潰し方は要注意だ。

 本を読むなり、ゲームをするなり、ネット回線に頼らずに過ごす手段を持ち込む必要がある。私はAmazon プライム・ビデオを活用している。

 事前にWi-Fiのあるところで、観たい映画をスマホにダウンロードしておけば、電波の繋がりにくい汽車内でも快適に過ごせるのだ。ちなみに30日間の無料体験期間を活用するのも手である。

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前の駅も、次の駅も秘境駅である。

 幌延駅の中には観光案内所があり、自転車を借りることができる。駅前はノスタルジックな雰囲気だが、居酒屋や宿泊施設、本屋、スーパー、ガソリンスタンドなどが並んでいる。

 秘境駅だらけなのは幌延町の公認である。もはや代表的な観光スポットのひとつなのである。
現役の公衆電話。
駅側から見た景色。写っていないがタクシーもある。

ふるさとの森キャンプ場

 さてと、まずは幌延町全体を見渡してみる。駅周辺の住居が集中している場所は1Km四方程度であり、小高い場所から一望することができる。「スキー場」か「ふるさとの森キャンプ場」である。

意外と見所満載である。
ふるさとの森キャンプ場の裏山より。左奥の緑屋根の立派な建物は町役場である。

 幌延町は「秘境駅の里」の他にも様々なシンボルがある。例えば「トナカイ」。または「幌延深地層研究センター」。あるいは「サロべツ原野」などである。

トナカイ観光牧場

 幌延町のマスコットキャラクター「ホロべー」はトナカイであるが、野生のトナカイが生息している訳ではない(鹿はうんざりする程いる)。トナカイ観光牧場公式)があるのだ。

君がホロべー?
気温を表示してくれるはずが…あまりの寒さに現実逃避しているのだろうか。

幌延深地層研究センター

 トナカイ牧場の隣には、幌延深地層研究センター公式)がある。原子力発電での使用済み高レベル放射性廃棄物を安全に地層処分するための技術を研究している施設である。

 その中にある「ゆめ地層館」では、博物館さながらに見学することができる。しかも無料である。事前に手続きをすれば、深度350mの調査坑道の見学も可能である。

 垂直に掘られた立坑を工事用エレベーターで降りて行く。深度350mの世界は、閉所恐怖症の人なら発狂してしまうかも知れないが、ジュール・ベルヌの「地底旅行」が愛読書の私にとっては、ワクワクする世界だった。

垂直に掘られた立坑を…
工事用エレベーターで降りて行く。
エレベーターを下から見た図。

 肝心の坑道の写真は、不特定多数の人が写っているため、載せることを断念した。太古の時代に閉じ込められた地下水が湧き出ていたり、化石があったり、どこから紛れ込んだのか逞しい生命力の苔類がライトの灯りの下で息付いていたりと、興味深くも不思議な世界であった。

 これは、私にとって最も、愛読書であるジュール・ベルヌの作品、地底旅行センター・オブ・ジ・アース)に近い行為であった。

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サロべツ原野

 サロベツ原野公式)は、2005年11月8日にラムサール条約湿地に登録された、生物多様性の維持に重要な湿地である。

何もないと思うのは人間だけなのだ。

 幌延ビジターセンターが、幌延駅から最も近いサロベツ原野への入口である(約11Km)。その近くに展望台があった。サロベツ原野を見渡すことが出来そうだ。

幌延ビジターセンターのほぼ正面にある。
展望台より。正面の建物が幌延ビジターセンター、右奥に続く遊歩道を歩いて湿地を探索することができる。
サロベツ原野に指定されている場所に限らず、360度こんな景色である。目に映る背の高い建物は風力発電所くらいである。

 遊歩道を歩いて行くと、華やかな季節にはまだ早いものの(2018年6月23日)、色とりどりの花が咲いているのが分かる。サロベツ原野には複数の沼があるが、沼によって様相が異なる。

 幌延ビジターセンターのすぐ側にある長沼は、水生植物によって飾られていた。天気には恵まれなかったが、それでも、まるで「光を表現しようとした水彩画」のように美しい景色であった。

長沼と水生植物。

 所々、水没した遊歩道を辛抱強く歩いて行くと、やがてパンケ沼という場所に出る。今回はここで引き返したが、更に進めばペンケ沼という場所に出る。

 Googleマップで見る限り、パンケ沼とペンケ沼の水脈は直接的に繋がっているが、長沼とは繋がっていないようである。実際、水質が全く異なるようである。

 パンケ沼の水は黄銅色だった。泥炭層から溶け出した酸化鉄が溶け出しているからとのことであある。

沼の方向から強風が吹いていて、まるで沼が覆い被さって来るかのような感覚にとらわれた。
パンケ沼は特徴的な色をした、非常に大きな沼である。

 今回の最後の写真は、幌延の住民の皆さんである(嘘)。

宗谷地方ではよく見られる景色である。北海道のイメージそのものでもないだろうか。
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