2021年2月16〜18日に掛けて、爆弾低気圧が日本海側を襲い、北海道では数年に一度の猛吹雪となりました。
大地の雪は舞い上がり、空の雪は渦を巻き、そして混ざり合い唸りを上げ、地上の全てを白く染め上げました。
日本海側から押し寄せた948hPa前後の衝撃は、風速30m以上で十勝連峰・日高山脈・大雪山と言った、大自然の壁を越え、道東に向かって勢い良く登って行くのです。
思い浮かんだのは進撃の巨人の世界です。
「その日 人類は思い出した ヤツらに支配されていた恐怖を… 鳥籠の中に囚われていた屈辱を…」
何としても道央に帰るぞ!
2月16日、道東は孤立しました。
道東と道央を結ぶ全ての峠が通行止めとなったのです。
私ラム肉食べ太郎とその友人は、当日は帯広にいて、旭川に帰ろうとしていたところでした。
2月15日の帯広の気温は7℃と、この時期にしては珍しい暖かさで、降り続ける強い雨が雪を溶かしました…そんな翌日の雨上がりの空を喜んでいたものです。
帯広畜産大学構内に建てられた日本酒の蔵「上川大雪酒造 碧雲蔵」を見学したり…
スズラン印で有名な砂糖の会社、日本甜菜製糖(株)の「ビート資料館」で、館長直々の案内を受けたりして、非常に有意義な時間を過ごしていました。
迫りつつある大自然の剥き出しの牙をほとんど心配していなかったのです。
帯広のソウルフードであり究極のB級グルメである「インデアンカレー」を堪能した昼後に、やっと旭川へと繋がる日勝峠へと車を走らせました。
インデアンカレー(公式)
しかし日勝峠を目前に引き返さざる得ませんでした。
日勝峠は通行止め…いや、正確には浮島峠を除く全ての道央へと繋がる峠が通行止めになっていたのです。
浮島峠を通るには、現在地より遥か北の遠軽町から下川町へと抜ける必要がありました。
「何としても道央に帰るぞ!」
帯広に引き返すべきだったのかも知れません。
長い長い旅の途中の、ホワイトアウトと闇夜の混沌の時間の遠軽町で、新たな絶望が待ち受けていました。
浮島峠も通行止めとなっていたのです。
Twitterの情報によると、トンネル内でトレーラー同士が衝突したとか…何にせよ、全ての峠道は断たれたのです。
それでも道央に抜けると言うのであれば、峠そのものを迂回する必要があります。
遠軽町から滝上町、そして西興部村へと抜ける道道137号線を使い、下川町から名寄へ国道239号線で抜けるルートです。
つまり更に北上しなければならないのです。
遠軽町から滝上町へと抜ける道は、意外と道路に雪はなかったものの、折れた枝が道路に散らばり、時々倒木が道路の半分を塞いでいました。
滝上町から西興部村に抜ける道では、突風が視界をホワイトアウトし、そんな試練の中で道路脇にはバスとトラックが共にひっくり返っていました。
そして、この道道137号線すらも目の前で一時的に塞がったのです。
どうやら緩い登り坂のカーブのアイスバーンにトラック4台が捕らわれ、立ち往生しているように見えました。
しかし完全に塞がらなかったのが幸いし、帯広を出てから10時間車を走らせ続けた末に、遂に名寄へと抜け、我々は道央の地へ踏み入れることができたのです。
下川町の町中を抜ける道路を動画で撮りました。
家がある分だけ風が遮られるため、町の外に比べたら視界は良好で、道路も埋まってはいませんでしたが、本州の人から見たら物珍しい映像なのではないでしょうか。
士別からは国道40号線で南下し旭川に戻るだけです…とは言え国道40号線は除雪車の多大なる尽力のお陰で、辛うじて車が通れる状態でした。
迂闊に脇道に入ればたちまち遭難してしまったに違いありません。
強風によって雪は水面の如く平坦にならされ、平野の間の細い道など、とっくの昔に雪で埋まっていたのです。
除雪車がいなければ国道40号線とて同じ事だったでしょう。
何ともあれ、こうした大冒険の果ての真夜中の23時半に、運の良かった私達は無事旭川の家へと戻ることができたのです。
新たな旅立ち
翌朝の旭川の天気は、強い風が吹いてはいるものの、台風一過とも言えるような良く晴れた暖かい日でした。
こんな日はどこかに出掛けたくなりませんか?
昨日の興奮がまだ冷めていなかったのか、はたまた頭のネジが外れているのか、私ラム肉食べ太郎は「士別市」へと向けて車を走らせていました。
旭川の街を出ると、見事に吹雪いていました。嵐は去っていなかったのです。
「不要不急の外出は自粛して下さい。」
天気予報をちゃんと見るか、ネットで情報収集さえしていれば、私とて決してピクニックなんかに出掛けたりはしなかったでしょう。
しかし出発した後に後悔しても仕方ありませんので、とりあえず士別市と言えばジンギスカンです。
そんな士別市でジンギスカンが有名なお店は「羊飼いの家」であるとGoogle先生は答えました。
今日のランチが決まりました。
「羊飼いの家」は町外れの小高い丘の上にありました。
よりによって記録的な悪天候のこんな日に丘の上まで来る物好きな客はいないだろうし、もしかしたら閉まっているかも知れないと思っていました。
ところが店は開いていて、お客さんも他に2組いました。
席に通された時の店員さんの表情が忘れられません。
「こんな天気の日に馬鹿じゃないの?」とでも言いたそうな微笑…まあ、私も他のお客さん見てそう思いましたけどね。
注文したのはラム焼肉定食(1,350円)です。
残念ながらブランド羊のサフォーク(2,200円)は品切れ中でしたが、代わりに選んだはずのこのラム焼肉定食も絶品でした。
どう表現しても白々しく思えてしまう程、まさに言葉に言い尽くせない美味しさでした。
私ラム肉食べ太郎、この名前に誓って「羊飼いの家」のラム焼肉定食は至高のグルメだったとここに宣言します。
ジンギスカンを食べた後は、その原料である「羊」を見に行きます。
悪趣味なようにも思えますが、美味しいものから目を逸らしたらいけませんね。
続きはこちら:「士別市【その2】:爆弾低気圧の到来 そして羊は震える」
ブログ村に参加しています。右下よりクリック支援よろしくお願いします